ドイツ銀行は今週、米司法省に140億ドルの和解金を要求されたことが大ニュースになりました。これにより、同社の株式はおろか、債券市場や果ては日本の為替市場にまで、大きな変動を起こしました。しかしながら、この米司法省への和解金の可能性自体は既に知られていたことでした。また、多くの人にとっては同社CEOやドイツのメルケル首相が執拗に政府による資本救済の可能性すら否定していることは理解し難いことかと思います。
私が見た中では、この記事が今回のドイツ銀行の問題について良く解説されています。
「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト ー マネーボイスそう、ドイツ銀行の大型訴訟はサブプライムローンの違法販売だけに留まらないのです。
さらに、ドイツ銀行は60億ドル分の訴訟引当金を設定していますが、140億ドルの半分も請求されてしまえばオーバーしてしまいます。これらが簿外債務と市場に認識され、和解金が予測されていたにも関わらず、今回のドイチェショックに発展したのです。
その上問題をややこしくするのが、EUが法律で国家による銀行救済に対して課した「ベイルイン」という制度です。これによりドイツ政府は、ドイツ銀行の債権者や株主(または預金者)に損失を負担させなければ銀行に対して資本注入出来ないということになっています。
もし、ドイツ政府が資本救済をチラつかせた場合、増資による株価の下落だけでなく、「ベイルイン」が意識され、同社の関連市場は乱高下し、大混乱が発生することでしょう。よって、ドイツ銀行のCEOもメルケル首相も本当にその日が来るまで完全否定するしかないのです。
ちなみにこのEUのベイルイン制度ですが、EUでは2016年に鳴り物入りで始まったばかりです。ですが、既に株価や債券市場への混乱に繋がっているだけとの指摘もあります。
かつて、最先端と呼ばれたサブプライムローンが世界的なショックを引き起こした事を考えると、ドイツ銀行よりもこの「ベイルイン」に注目した方が正確な見方かもしれません。
追記:
米司法局との和解金が54億ドルになると一部報道で伝えられましたが、この額でも
おそらく追加引当金が必要になるでしょう。
ドイツ銀:追加引き当て必要にも、米RMBS問題など ー JPモルガン
【執筆:T.I.】
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