前向き思考やポジティブシンキングといった性格は、世間一般では好ましいとされていますが、投資の世界ではあまり好ましいものではありません。
何故ならば、投資というもの自体が後ろ向き思考一直線で成り立っているからです。
投資においては「現在価値」という言葉が重要な意味を持ちます。計算式うんぬんもありますが、ざっくばらんに言えば、「今ある100万円と10年後の100万円では価値が違う」ということです。
現金では、10年後の100万円の方が今ある100万円よりも価値が低いとされています。つまり、使わなければどんどん価値が下がっていくという考え方です。どんどん価値が下がっていくという後ろ向き思考なので、株や債権などを運用して下がるのに逆らおうとするのが投資です。
ハイパーデフレのように貨幣の価値が上がっていくなら投資の必要はありません。タンス預金でもしてれば運用コストをかけずとも実質的には資金が増えていきます。むしろ株のようなデフレの悪影響を受ける資産を持っていた方が額面は減ってしまいます。
"今日よりも明日はもっと悪い"というのが投資が必要とされる根源的な理由です。実際、大昔の、借金を踏み倒されるかもしれない…、積荷船が沈むかもしれない…、というマイナス思考から、債権や株式会社といった概念が産まれてきた事実があります。
まあそんなネガティブ思考とオトモダチな投資の世界ですが、何故か(特に日本では)前向き思考の人たちに好かれる傾向があります。いくら儲かっただとか、どこが儲かるだとか、などは投資においては重要ではありません。
後ろ向き思考の塊なのに前向き思考の人たちばかり集まるミスマッチが、3年で9割のトレーダーが辞めるという日本の投資慣行を作り出しているのかもしれませんね。
【執筆:T.I.】
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